「はい」から始まる職場のすれ違い。「スキルアップしたい?」では本音が見えない理由
50代会社員の気づきノート
「スキルアップしたいよね?」
もしあなたが、誰かにそう聞いたことがあるなら。 その返事を、本当に聞けていたか、考えてみたことはありますか。
正直に言うと、私自身は長いあいだ、人にこんな問いかけをする余裕がありませんでした。 自分のスキルアップのことで、いつも精一杯だったんです。
でも、会社員に復帰して5年目。 後輩に、ものを教える立場になりました。
そうなって初めて、考えるようになったことがあります。
前回書いた、書類処理のすれ違いの話。 あれには、続きがあります。
部長は、若手のAさんを育てたいと思っていました。 雑務ばかりじゃなくて、できることを増やしてあげたい。その気持ちは、本物でした。
もし部長がAさんに、こう聞いたとします。
「雑務ばかりじゃなくて、スキルアップしたいよね?」
Aさんは、たぶんこう答える。
「はい」
一見、合意がとれたように見えます。 でも、私はこの「はい」を、素直に信じられません。
だってこの問いかけ、構造的に「いいえ」が言えないんです。
上司に向かって「スキルアップしたくないです」と返せる若手なんて、ほとんどいない。 だから「はい」は、本音じゃなくて、その場の正解を返しただけかもしれない。 問いが、答えを誘導してしまっている。
しかも、その「はい」の中身は、たぶん一枚岩じゃないんです。
「成長はしたい。でも、今より忙しくなるのは嫌」
「スキルは欲しい。でも、事務作業で得るスキルは、別にいらない」
そんな矛盾したものが、ひとつの「はい」の中に同居している。
人の本音って、だいたいそうですよね。 きれいに一方向を向いてなんて、いない。
コーチングを少し学んでから、こういうことが気になるようになりました。
「スキルアップしたい?」は、聞いているようで、いちばん大事なところの手前で止まっている。
本当に聞くべきは、たぶんこっちなんです。
「どんなことができるようになったら、自分にとって意味があると思う?」
事務スキルが、その答えに出てくるかもしれない。 出てこないかもしれない。
でも、もし出てこなかったら、それはそれで大事な発見です。 ああ、ここはこの人の伸ばしどころじゃないんだ、とわかるから。
そしてもうひとつ。 現場で「なんだか、この人乗ってこないな」と感じる、あの違和感。
あれって、「はい」という返事よりも、よっぽど本音に近かったりするんです。
言葉より、態度のほうが正直なときがある。
だから私は、誰かの「はい」をもらえたときほど、少し立ち止まるようになりました。 その「はい」は、どんな「はい」だろう、と。
前向きな返事ほど、ほんとうは、ていねいに聞かなきゃいけないなって。
あらためて、永野ヨウです。20年のブランクをこえて、48歳で再就職したママ会社員。
本業の傍ら、コーチングを学んでいる途中です。
もしなにか感じるところがあれば、コメントで聞かせてくださいね。
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